撮影の手間を減らしたいいい。
撮影で使うソフトボックス、立てたり片付けたりするのが地味に面倒……と思っていた。特に時間制限がある場所で撮るようなスケジュールの日には、少しでもセットアップの時間や手間を減らせたらといつも思っていた。
これまでにも、SMDVのFLIPシリーズなど、開閉が速いと評判の製品に触れる機会があった。実際に所有していたわけではないが、友人や知人が使っているのを触らせてもらったことがあり、その開閉のスムーズさには確かに感心した。ただし、そのぶん価格も高めで、僕自身にとっては手が出しづらいという印象があった。ソフトボックスの展開方法って、製品によって意外と癖があるし、ディフューザーを張るだけでも骨が多いと時間がかかるものだ。
そんな中で見つけたのが、FOMITOの95cm八角形ソフトボックス。Amazonではそれほど目立っている製品ではなかったが、軽量・クイックセットアップ・手軽に展開できるというスペックに惹かれ、試しに購入してみることにした。
FOMITOといえば、以前からカメラ周辺アクセサリーを取り扱っていた印象が強い。たとえば、カメラリグやマジックアーム、三脚、ライトスタンドなどのサードパーティ製品で見かけたことがある人も多いはず。最近ではLEDライトや撮影機材全般にも力を入れているようで、特に映像制作向けにリーズナブルで機能的な製品を次々に出している印象がある。
中華ブランドとしては比較的新しく見えるけれど、品質に対する取り組みやカスタマーサポートなども徐々に整ってきていて、購入のハードルはかなり下がってきたように思う。
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ソフトボックスの主なスペックと構成
FOMITO ソフトボックス 折りたたみ イージーソフトボックス スピーディーセットアップ 撮影用ソフトボックス ハニカムグリッド Bowensマウント付き (95cm)
- サイズ:直径95cm(八角形)
- 重量:約1.2kg(実測値)※非常に軽量。スタジオ用としてはもちろん、ロケにも持ち出しやすいサイズ感。
- 展開方式:クイックリリース・折りたたみ式(ワンタッチ展開)。骨組みを広げる手間が不要。
- 素材:軽量アルミニウムフレーム、耐熱ファブリック。長時間の照明使用でも歪みや焦げの心配が少ない。
- 同梱物:
- ソフトボックス本体(クイックリリース構造)
- インナーディフューザー(中央からの強い光を和らげる)
- アウターディフューザー(全体の光を拡散)
- ハニカムグリッド(光の拡がりを制御し、背景や周辺光の干渉を抑える)
- キャリングバッグ(肩掛け可能。分厚めのナイロン素材で、輸送時の保護にも役立つ)
この構成で9000円以下という価格帯であれば、正直コストパフォーマンスはかなり高い部類に入る。
ElinchromやProfoto用アダプターも取り扱いがあるようだが、日本国内ではまだ販売ルートが限られている印象だった。FOMITOの日本語対応サイトも見つけづらいため、注文はAmazonやグローバルショップ経由になることが多い。
今回は、手持ちのProfoto B10にBowens変換アダプターを介して取り付けて使用した。
アダプターの装着には若干のコツがいるが、しっかりと装着できれば安定性も悪くない。実際の撮影現場では、特にグラつきや角度ズレといった問題は発生しなかった。取り付け・取り外しも数回練習すればスムーズにできる。
ちなみに、30x120、35x160、60x90といった長方形シリーズや、95cmの他に120cmの八角形(オクタ)のソフトボックスが存在する。どれも使い勝手が良さそうな大きさだ。90x120とかあればめちゃくちゃ欲しい。
マウントアダプターを装着できる場所。
こちらがBowensマウントアダプター。
取り付けもワンタッチ。強固に装着されています。
FOMITO アダプタリングProfoto to Bowens 撮影ビデオライトProfotoマウントからBowensマウントに変換用
ソフトボックスのページにProfotoのマウント変換器がなかったので、しかたなくBowensマウントに変換するアダプタを使っています。ソフトボックス自体がめちゃくちゃ軽いのでこういうのをやっても負担にならない。
セットアップは圧倒的に速い、むしろ爆速
この製品、驚くほどセットアップが簡単だった。「爆速」と言っても良い。
多くのソフトボックスは、まず骨組みを広げてからひとつひとつロックし、そこにインナー・アウターディフューザーを装着し、さらに必要があればグリッドをつけて……という手順になる。それだけでも3〜5分は普通にかかるし、現場で繰り返すにはストレスがある。
FOMITOのソフトボックスは、ポップアップ式のクイックリリース構造。グリップを握って引き上げると、内蔵されたフレームが一気に開いて形を整えてくれる。骨の1本1本をロックする必要はなく、折りたたみ傘を開くような感覚で完成する。
展開は体感で10秒以内。アウターディフューザーとグリッドを装着しても、全体の準備は1分以内で終わる。これは本当に楽で、初めて使ったときは「え、もう終わり?」と驚くほどだった。
しかも、この速さは「慣れたから早い」ではなく、構造そのものがそういうふうに作られている。誰でも同じくらいのスピードで展開できると思う。
撮影現場では時間が限られていることが多い。特にポートレートや取材のような撮り直しの利かない撮影では、機材の準備に手間をかけるのは避けたい。そういう意味でも、FOMITOのこのソフトボックスは「早くて確実」という安心感がある。
軽量なので、スタンドへの取り付けや角度調整もスムーズで、屋内でのポートレート撮影や、移動を伴う小規模のスチル案件などではかなり実用的だ。
実際、僕は撮影中に一度セットを組み替える必要があったのだけれど、他の機材を使っていたら時間が足りなかったと思う。その点、FOMITOは組み替えも一瞬だった。
正直、「FOMITO、こんなに良いソフトボックス出してたんだ」と思った。
あと軽いのがとにかく良い。
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光の質とディフューザーの影響
気になるのは、光の広がり方と質感だ。そこで、以下の3パターンで光の出方を比較してみた。
1. ストロボ直当て(ソフトボックスなし)
Profoto B10からそのまま発光。光は部屋中に広がり、天井バウンスも強い。影は硬く、輪郭がくっきり出る。特に陰影のコントラストが強いため、撮影内容によっては使いづらく感じる場面も。背景に不必要な光が回ってしまうこともあり、制御しづらい点もある。影を見てもらうと分かる通り、部屋で光が回っており若干影が薄れている。
2. ソフトボックス+ディフューザーなし
今回はボックスのみを取り付けて発光。すると、明らかに光の指向性が高まり、天井や壁への余計な反射が抑えられる印象。光の「芯」がしっかりと前方に向かっている感じで、被写体に集中して当たる。天井に当たる分が減ったので、影の回り込みが若干変わっている。そのため、天井で跳ね返るはずの光がない分、影が濃くなっている。
被写体の立体感を出しつつ、周囲への光漏れを抑えたい場面では特に有効だと感じた。
3. ソフトボックス+アウターディフューザー(インナーなし)
外側の拡散布だけを取り付けて発光。光の質はぐっと柔らかくなり、人物の肌や製品の輪郭もややトーンが丸くなる。特にポートレートや静物撮影では、この柔らかさが被写体の質感を引き立ててくれる。
アウターディフューザーだけでも効果は高く、これだけでも十分実用になる。もちろん、インナーディフューザーと組み合わせればより均一で柔らかい光が得られる。必要に応じて調整できる柔軟性もありがたい。
ところで、先程の写真とは若干色が違うように見える。
ディフューザーによる色味の変化
いくつかのレビューでも指摘されていたが、ディフューザーを通すと若干色温度が変わる印象がある。具体的には、少しだけ青味が足される方向(1000kほど差がある)。これは布の材質やコーティングの影響だと思われる。セコニックのスペクトルマスターでも持っていたら、もっと詳細なレビューを書けただろう。
ただ、これはカメラ側のホワイトバランス設定や、RAW現像時の補正で十分リカバリ可能なレベルだった。念のため、撮影時にグレーカードやカラーチェッカーを使っておくと、後処理でも迷いが少なくなる。
カラーチェッカーを置いて、ホワイトバランスを合わせる前。
カラーチェッカーによりホワイトバランスを合わせた後。
そして先のディフューザーありの写真に先ほどでた値を元に、調整した後。
当たり前だが、ディフューザーを通すことで、光の輪郭が柔らかくなり、肌のトーンが穏やかになる。そのため、ポートレート撮影では特に重宝する。また、製品撮影などで色再現性が求められる場面でも、事前に色味の補正を意識していれば特に問題なく使える。
それよりも、影の滑らかさや、照射範囲のコントロール性の方が印象的だった。
ハニカムグリッドもあります
ハニカムグリッドを装着すれば、さらに照射範囲を狭めることができ、背景を落としたいときなどにも便利だ。
このグリッドは装着も簡単で、柔らかい素材ながらしっかりと形状を保つ作り。持ち運び時には小さく折りたためるので、収納性にも優れている。
総評:価格以上の価値あり
総じて、このFOMITOの95cmクイックソフトボックスは、非常に満足度の高い製品だった。
開閉が爆速、持ち運びも楽、光の質もコントロールしやすく、何よりも「面倒くさくない」点が良い。これひとつで撮影準備の精神的な負担が大きく軽減された気がする。使い始めてから、他のソフトボックスを使うのが面倒に感じるほどだ。
また、見た目以上にしっかりしていて、耐久性もある。安価なソフトボックスにありがちな「布がヨレる」「骨が歪む」といったトラブルも今のところ感じていない。むしろ、撮影頻度の高い現場ほどこのスピード感と安定感がありがたく感じる。
価格帯的にも手が届きやすく、初めてのソフトボックスとしても、既にいくつか持っている人の買い足しとしてもおすすめできる。特に、1〜2灯でのコンパクトなライティングを組む人には非常に相性が良い。 色においては、Fomitoで揃えたら問題ないとは思う。
FOMITOの製品に初めて触れる人でも、きっと「思ったよりちゃんとしてる」と感じられるはずだ。今後、同じクイックリリース構造で別サイズの展開やスクエアタイプが出れば、そちらもぜひ試してみたいと感じている。
FOMITO ソフトボックス 折りたたみ イージーソフトボックス スピーディーセットアップ 撮影用ソフトボックス ハニカムグリッド Bowensマウント付き (95cm)