LEDライティングという言葉に、ちょっとだけ距離を感じていた。 正直に言えば、僕自身の撮影スタイルはストロボ中心で、LEDの導入は少し先の話だと思っていた。どこかに「動画や特殊なシーン向け」という先入観もあったのかもしれない。
照明機材としてLEDが注目されているのは知っていたものの、「ストロボで困ってないし」「バッテリーが不安」「連続光だと柔らかさが出しにくいんじゃないか」……そんな風に、どちらかといえば食わず嫌いに近い感覚でいた。
でも、あるときSNSでこの本を見かけて、なにげなくKindle版を開いてみたのがきっかけだった。 『LEDライトで実践するムービー&スチルライティング図解』(著:鈴木佑介)。
最初の数ページを読んで、すぐに「これはちゃんと読もう」と思わされた。 単なる機材紹介ではなく、光をどう“考えるか”が丁寧に書かれていて、そこにグッと惹きつけられた。 ページをめくるごとに、「ああ、これは読んで良かった」としみじみ感じる一冊だった。
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鈴木佑介さんのライティング書籍が信頼できる理由
実は鈴木さんの書籍は、過去にも何冊か読んできた。どれも共通して感じるのは、「説明が的確で、実践的で、現場の空気が伝わってくる」ということ。 たとえば撮影の準備段階から照明を決めるまでの判断のプロセス、撮影現場でのちょっとした工夫、編集でどう仕上がるかを見据えたライティングの選択など、読者の想像の一歩先を行くような視点が常に含まれている。
今回の本もまさにその延長にある一冊で、「これはすごい、これは読んでほしい」と思える内容がぎっしり詰まっている。ひとつひとつのライティングパターンが単なるテクニック紹介にとどまらず、「こういう時にはこう考えると良い」という背景ごと提示されているから、読むほどに応用力が養われていく。
ライティングの本と聞くと、図や理屈が中心で、ちょっと難しそうな印象を持つ人もいるかもしれない。だけど、鈴木さんの本は違う。 ちゃんと撮影の「前後左右」が描かれている。なぜこのライトを選び、どの角度から当てて、結果どんな表情になったのか——その「考え方」までも丁寧に綴られていて、読んでいてとにかく面白い。まるで一緒に現場に立って、横から手順を教えてもらっているような感覚すらある。
鈴木 佑介さんアカウント:@ys_kitchen
カメラ初心者にもおすすめしたいLEDライティング解説書
この本が素晴らしいのは、LEDライトの使い方だけにとどまらず、「光の扱い方」の基礎そのものを教えてくれるところだ。 つまり、これからカメラを始める人や、ライティングに自信がない人こそ、最初に読んでおいて損はない。
「ライティングは難しそう」と感じている人ほど、この本のわかりやすさには助けられるはずだ。たとえば「光が硬い/柔らかいとはどういうことか」「距離と光量の関係」「拡散することで何が変わるのか」——そうした基本的な内容が、実際の撮影例とともに具体的に語られている。
また、説明が非常にていねいで、「この角度から当てると影がこう変わる」「この位置にディフューザーを置くだけで印象がやわらぐ」といった、誰でもすぐに実践できるヒントが満載だ。
さらに、ただ用語や理論をなぞるだけでなく、1灯から始めて、徐々に2灯、3灯へと発展させていく構成も秀逸。段階的に理解が深まるよう設計されているから、自分のペースで読み進められるし、途中で挫折しにくい。
本の中では「一灯だけでも、十分魅力的な絵が作れる」というスタンスも繰り返し紹介されていて、必要以上に機材をそろえなくても大丈夫、という安心感もある。これは初心者にとってかなり大きなポイントだと思う。
そしてもう一つ特筆すべきは、本書に登場するモデル・遥野(はるの)さんの存在だ。 表情の豊かさや佇まいのしなやかさが、ライティングの違いをより分かりやすく、かつ印象深く見せてくれている。どの作例にも芯があり、見る側に「こう撮ってみたい」と感じさせてくれる説得力がある。
こういった優れたビジュアルと、わかりやすい理論とが絶妙なバランスで融合しているのが、この書籍の大きな魅力だ。
カメラやライティングに対して不安や疑問を感じている人が、読み終える頃には「自分でもやってみたい」と思えるようになる——そんな力を持った一冊だと感じた。
ちなみに僕が所持しているのはKindle版です。
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豊富な作例とセッティング図が魅力
この本の中で特に惹かれたのは、やっぱり作例の豊富さだ。 商品撮影、ポートレート、ムービー風の演出、カラーライティング、自然光との合わせ技……ジャンルもテイストも実に幅広い。
しかも、どの作例にも「どうやって撮ったか」が詳細に記されている。光の位置関係、使ったアクセサリー、距離や角度……そうした“裏側”が惜しげもなく開示されていて、まるで撮影現場を一緒に覗き込んでいるような気持ちになる。
さらに素晴らしいのは、それぞれのセッティングに「どういう意図でその光を選んだか」「失敗したパターンとどう違うのか」といった背景説明まで添えられていることだ。 たとえば、同じシチュエーションでも、光をほんの少しだけ柔らかくした場合とハードにした場合で、被写体の印象がどう変わるか。 色温度を暖色に寄せるだけで、画面の雰囲気がどれだけ変化するか。 ——そんな微細な違いを、作例写真とともに丁寧に比較して見せてくれる。
読者としては、「なんとなく真似してみる」のではなく、「このライティングにはこういう理由がある」と理解した上で実践できるので、自分の撮影にもすぐ活かせる。 まさに「真似できる技術が身につく本」として、かなり実用的な構成になっている。
これは、なかなかできることじゃない。 ライティングの本はたくさんあるけれど、ここまで丁寧に、かつ現場のリアルを交えて解説してくれる書籍は本当に貴重だと思う。
NANLITE FC-500が本気で欲しくなった
読み終えた頃には、頭の中にある機材リストが確実に増えていた。 特に気になったのは、NANLITEの「FC-500」というLEDライト。 程よい価格感とパワフルな出力、扱いやすそうな操作系、そして作例に登場していたあの質感——どれをとっても心を動かされた。
印象的だったのは、作例の中でこのライトが生み出す光の“粘り”のようなもの。 ハイライトが滑らかにつながり、シャドウの質感がしっかり残っている。そのバランスがとても好ましくて、「この照明ならポートレートも商品も両方いける」と直感的に思った。
スペックを見ると、CRI(演色評価数)は95以上、色温度は2700Kから6500Kまで調整可能。 さらに、バリアブルな調光機能や直感的な操作が可能なノブ設計、高速リフレッシュレートによるフリッカーレス撮影にも対応している。 USB-C経由でのファームウェアアップデートや、DMX制御にも対応していて、プロユースにも十分耐えうる構成になっている。
筐体はしっかりしているが、サイズと重さは比較的コンパクトで、個人撮影環境やホームスタジオにも無理なく導入できる。 冷却ファンの動作音も控えめなので、映像撮影で音を拾いたくないときにも重宝しそうだ。
なにより、「この本で紹介されていたあの雰囲気を、自分の部屋でも作れるかもしれない」と想像するだけで、創作意欲がふくらむ。
「あの光が作れるなら、自分の写真もきっと変わるかもしれない」 そんなふうに思わせてくれる道具に出会えるのも、こういう本を読む楽しさのひとつだと思う。
スペック調べている時点でお察しです。
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ライティング初心者から経験者まで、幅広くおすすめできる一冊
僕はLEDライトを積極的に使ってきたわけじゃなかったし、そもそもLEDに対する関心もそこまで強くなかった。 「自分の撮影スタイルにはあまり必要ないかも」とさえ思っていた。だけどこの本を読んでからは、その考えが少しずつ変わっていった。
まず、光に対する理解が変わった。光を「当てるもの」から「扱うもの」へと再認識させられたような感覚があった。 どんな光がどう作用して、どんな影が生まれ、それがどんな雰囲気につながるのか。 そういう視点を持つことで、これまでなんとなく撮っていた写真に「設計」と「意図」が生まれてくるのを感じた。
そして何より、「もっと撮ってみたい」と思えるようになった。 新しい機材を試したくなるというよりも、光をコントロールする楽しさを味わってみたくなる——そんな前向きな気持ちになれたのが、とても嬉しかった。
これは、ライティングに苦手意識がある人にこそ届いてほしい本だと思う。 もちろん、ある程度経験を積んできた人にとっても、自分の考え方を見直すきっかけになるはずだ。
写真や映像の世界で、これからライティングに向き合っていきたい人へ。 初心者でも、中級者でも。 この本は間違いなく、その一歩を後押ししてくれるはずです。