音楽の趣味というのは、ふとしたきっかけで大きく変わることがある。僕にとっての最近のそれは、「ポップしなないで」だった。
最初の出会いは、ジャンプ+で連載されている『ふつうの軽音部』という漫画だった。物語の中でさりげなく登場する「UFOを呼ぶダンス」という楽曲に惹かれて、YouTubeで調べてみた。偶然見つけたまとめリストから再生すると、音がふわっと身体に入り込んできた。
最初は、ただ耳に残るポップな曲だと思っていた。でも、MVのアニメーションと音の柔らかさ、なによりもボーカルの声に驚かされた。複数人が歌っていると思っていたら、歌っているのはかめがいあやこさん一人。驚くほど広い声域を自在に使い分けていて、そこからはもう、あっという間だった。気づけば「ポップしなないで」の曲を次々に聴き漁っていた。
正直、まだディープなファンとは言えない。でも、このユニットの音楽が好きだという気持ちは確かにある。今回は、そんな僕が実際に聴いて好きになった楽曲を紹介していく。
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ポップしなないでとは?
「ポップしなないで」は、2015年に東京で結成された2人組の音楽ユニット。
ボーカルとキーボードを担当するかめがいあやこ(亀谷理子)と、作詞・作曲・ドラムを担うかわむらの二人で構成される。ユニット名には、「ポップ=軽やかで楽しいものが、絶対に消えないでほしい」という願いが込められている。
彼らの音楽は、ピアノとドラムというミニマルな編成に、語りかけるようなボーカルと独特な言葉選びが重なるのが特徴。
キャッチコピーである「セカイ系おしゃべりPOP」の通り、リズムに乗る言葉たちは、ときに軽やかに、ときに鋭く、聴き手の感情をさざ波のように揺らしてくる。
2021年にはミニアルバム『美しく生きていたいだけ』をリリース。リード曲「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」は、印象的なフレーズとリズミカルな展開が話題となり、MVやSNSを通じてじわじわと人気が広がった。ジャケットは漫画家・今井大輔の描き下ろし。
そして2023年、ついに日本コロムビアからメジャーデビュー。フルアルバム『戦略的生存』を発表し、代表曲「ローリンソウル・ハッピーデイズ」がアニメ『農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。』のEDテーマに起用されたほか、「UFOを呼ぶダンス」や「月の踊り子」が各種メディアで取り上げられ、一躍注目を集める存在となった。
ライブ活動にも積極的で、全国各地でワンマンやイベント出演を重ねている。また、公式ファンクラブ「POP団」では限定コンテンツの配信やグッズ販売など、ファンとの距離感を大切にした発信を続けている。
ジャンルとしてはポップスの文脈にありながら、どこかインディー感を残した言葉の温度感と、聴き心地の良さが同居しているのが魅力。
派手ではない。でも、何度も聴きたくなる。言葉が心の奥で反響するような、そんな音楽を鳴らしている。
ポップしなないでの最新情報を掲載! ポップしなないで|POP団
popsnnid.com
1. UFOを呼ぶダンス
出会いの曲。イントロのテンポ感、キーボードの跳ね方、そして言葉がするする入ってくる感じが気持ちいい。全体的に軽やかなんだけど、どこか切ない感じもあって、聴いていて落ち着く。
特にサビの「UFOを呼ぶ〜」のフレーズの跳ね方がクセになる。MVはアニメーションがメインで、とにかく可愛い。あの映像と一緒に聴くことで、この曲の雰囲気がより伝わってくる。
実際にライブで歌っている様子がこちら。
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2. ローリンソウル・ハッピーデイズ
明るくてポップ。タイトルに“ハッピーデイズ”とある通り、軽快でリズムが心地よく、気づけば口ずさんでいる。実際、気づかないうちに「ろーりんそーる〜」と歌ってることが多い。
TVアニメ「農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。」のエンディングテーマにも採用された楽曲。最後の締めの歌詞が個人的にはすごく好きで、聴き終わった後の余韻が心地よい。
3. 支離滅裂に愛し愛されようじゃないか
タイトルがすでにパンチが効いてる。歌詞の言い回しもテンポも気持ちよくて、何度も繰り返し聴いてしまう。
「愛し愛されようじゃないか」っていうフレーズが何度も出てくるんだけど、不思議と耳に心地よくて、言葉のリズムがすごく良い。ジャケットは漫画家・今井大輔さんによる描き下ろしで、楽曲の世界観ともよく合っている。
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4. 夢見る熱帯夜
お風呂に浸かっているときのような気持ち良さがある。リズムがふわっとしていて、音が丸く、柔らかい。
MVもアニメーションで、色づかいがとても綺麗。どことなく夏の終わりを思わせるようなメロディが印象的で、サビの広がり方がとにかく気持ち良い。
5. エレクトリック修羅
タイトルでちょっと身構えるけど、聴いてみると妙にリアルな歌詞に引き込まれる。暗めのトーンから始まるけど、後半でぐっと盛り上がる構成がすごく良い。
歌詞の内容は、日常の中にある悩みやモヤモヤに寄り添ってくれるような感覚。重たくなりすぎず、それでも芯がある曲だなと思った。
ポップしなないでの魅力、音と言葉が日常に溶けるように
「ポップしなないで」の音楽を聴いて、まず最初に感じたのは、とにかく耳に心地いいということだった。ピアノとドラムというシンプルな構成なのに、音の丸み、リズムの軽やかさ、そして何より言葉選びの絶妙さが、その一曲一曲を奥行きあるものにしている。
派手な転調や力技のサビがあるわけではない。それでも、聴いていて疲れない、むしろ繰り返し聴きたくなる心地よさがある。たとえば「UFOを呼ぶダンス」。言葉遊びのようなメロディラインと、ふと立ち止まらせるフレーズの数々。言葉に芯があるのに、押し付けがましくない。語るように、すっと届く。
どの曲にも共通しているのは、“声”そのものが一つの楽器のように機能していること。かめがいあやこの声は、上下の音域の差がすごい。それを自在に行き来しながらも、自然体で響かせてくるのがすごい。軽やかに跳ねる言葉のなかに、どこか引っかかる感情の破片が紛れている感じがして、何度聴いても飽きない。
キャッチコピーの「セカイ系おしゃべりPOP」は、まさに彼らの音楽を言い当てている。音楽というより、日常の断片をすくい上げて、<strong">ちょっと不思議な透明感のある“会話”にしているような感覚。
全曲をまだ聴き込んでいるわけではない。アルバムもまだすべては把握できていない。でもそれでも、僕の日常には、たしかにこの音楽が居場所を作ってくれている。
まずは「UFOを呼ぶダンス」から聴いてみてほしい。MVもとても可愛いし、曲そのものが最初の入口としてちょうどいい。そこから自分のリズムに合う曲を見つけていくのが、きっと楽しいと思う。
そして、もしもいつか、ポップしなないでが伊勢市でライブをやるようなことがあったら──。
そのときは、迷わずチケットを取って、静かに会いに行こうと思う。
https://www.youtube.com/@popsnnid
www.youtube.com
ちなみにふつうの軽音部の4巻に「UFOを呼ぶダンス」が出てきます。