体調を崩していた。なんとなく喉が詰まり、背中に熱がこもっているような、でもはっきりとした症状があるわけでもない、あの曖昧な不調。こういう時は決まって、世界が灰色がかって見える。目に映るものすべてが、どこか鈍く、重く感じられる。
何もしたくない。机に置いたままのペンはまるで鉛のようで、パソコンの電源ボタンに手を伸ばす気力も湧かない。そんなとき、僕には自分を再起動するための装置がいくつかある。
一つは、いわゆる「鬼時間」ゲームだ。Apex Legendsのような高速思考を要求されるゲームに没頭することで、強制的に頭を回転させる。最近は少し離れていたが、またちょっとだけ触れ始めた。あの、思考の隙間が一切許されない感覚が、意外にも薬になることがある。
もう一つは、「Instagramに写真を投稿しなきゃ」という、誰に言われたわけでもない自発的なプレッシャー。これが、案外効くのだ。「写真を撮るだけでいい」と思うと、少しだけ日常にハリが生まれる。視点が変わるだけで、いつもの風景が新しく見えてくる。
今日はコーヒーを撮ることにした。いつもならサーモスのタンブラーで飲んでしまうが、今日は透明なガラスのグラスに注いでみる。氷が沈み、わずかに表面を揺らす。光が差し込む午後の部屋の中で、そのガラスの存在感が際立つ。まるで一瞬、時間が止まったかのような錯覚さえ覚える。
使用したカメラはCanon EOS Rと、EF 100mm F2.8 Macro。光を掴む感覚、ガラスの透明感、氷の輪郭、どれもこのレンズならではの描写だった。普段はもっと広い画角を選ぶことが多いけれど、今日はこの寄った視点がちょうどよかった。
ちなみに、今回淹れたのは伊勢市のプラウドコーヒーさんの豆。友人からのいただきもので、深みのある味わいがちょうど今の気分にしっくりきた。家のコーヒー豆もそろそろ底をつきそうで、次はどこで仕入れようかと考える時間もまた、少しだけ気持ちを前に進ませてくれる。
そんなふうにして、今日も僕は、ほんのすこしだけ、上向きに。